年譜>その36 1970〜71    /ヨシミツ 1970(昭和45)/42歳
〇実験アニメーション『やさしいライオン』(制作:手塚治虫、演出・美術:やなせたかし氏)が第8回「毎日映画コンクール大藤信郎賞」を受賞(2月)。

〇日本万国博(大阪万博)が開催される(3月)。手塚治虫は、フジパンロボット館を始め、いくつかのパビリオンのブレーンをつとめた。フジパンロボット館は「ユーモラスで暖かみのある機械との触れあいで、子どもに夢を…」をテーマにプロデュースした。

〇この頃、永井豪氏の『ハレンチ学園』など、多少のお色気については少年漫画にも受け入れられるようになっていた。
 この傾向は、昭和30年代の悪書追放運動を経験した漫画家には、少なからず複雑な思いをいだかせた。
 手塚治虫は、この頃、性(教育)のことを扱った作品を描いている(『ふしぎなメルモ』(『ママァちゃん』)/「小学一年生」(9月〜1971(昭和46)3月)、『アポロの歌』/「少年キング」(4/10〜11/6)、『やけっぱちのマリア』/「少年チャンピオン」(4/15〜11/16))。

〇「ビッグコミック」に『きりひと讃歌』が連載される(4/10〜1971(昭和46)12/25)。

〇『火の鳥』が第1回「講談社文化賞児童マンガ部門」を受賞(5月)。

〇アニメラマ第2弾『クレオパトラ』(原案・構成:手塚治虫、監督:手塚治虫、山本暎一氏、音楽:冨田勲氏、キャラクターデザイン:小島功氏)が一般公開される(9月)。『千夜一夜物語』につぐ興業成績を上げる。この映画にはゲイのキャラクターが登場するので、研究熱心なスタッフがゲイバーに通ったという話が伝わっている。

〇「COM」に『火の鳥/復活編』が連載される(10月〜1971(昭和46)9月)。

〇元編集者・福元氏がチーフアシスタントのひとりとして「手塚プロダクション」に参加する。以後、彼は最後の手塚作品まで関わることになる。当時、チーフアシスタント3人と十数人のアシスタントが3班に分かれ、24時間体制で仕事をした。

1971(昭和46)/43歳
〇「少年ジャンプ」誌上に「手塚賞」が創設される(2月)。
 新人漫画家の登龍門として、手塚治虫が審査員長をする。入選作は1作。正賞は手塚杯、副賞は賞金50万円であった。
 「集英社」側からは、文学の世界に芥川賞があるように、少年漫画にビッグネームの新人賞を作りたい、との申し出であった。それに対して、手塚治虫は「芥川賞にしても故人の名前、自分はまだ生きているが」としながらも、申し出はたいへん有り難いという返答であった。

〇「少年ジャンプ」に「ライオンブックス」シリーズを掲載する(3/22〜1973(昭和48)2/19)。

〇手塚治虫が「虫プロダクション」の社長を辞任する(6月)。
 「虫プロ」内では、手塚治虫の理想とする作家集団として進むという方向と、まず企業としての安定をはかるべきだという2つの方向があり、後者の道が選択された結果、手塚治虫の辞任となった。
 手塚治虫は次のように述べている(要旨)。
 さすがに我が子のように思ってきた「虫プロ」を離れることは何とも言えずさみしかった、だが「虫プロ」は僕のヴィジョンとは全く別方向へ独り立ちしようとしていたのだ、と。
 この段階までに「虫プロ」は手塚作品を離れ、以下の作品をアニメ化していた。『わんぱく探偵団』/、『アニマル1(ワン)』/川崎のぼる、『佐武と市捕物帳』/石ノ森章太郎、『あしたのジョー』/ちばてつや、『ムーミン』/、『アンデルセン物語』/、『さすらいの太陽』/、『国松さまのお通りだい』/ちばてつや など、である。

                              ヨシミツ 年譜の付録。その36について。    /ヨシミツ  引き続き、試行錯誤の時代といいましょうか、一方で、なにがしかの脚光を浴びながら、他方では、従来のマンガの在り方とは著しく違った動きが出てきて、そのことが手塚治虫にぶつかってきていますね。
 『ハレンチ学園』などに見られる"お色気"路線が出てきたりしたのも、この時代のことでした。
 また「虫プロ」社長辞任ということも、象徴的なことだと思います。
 「虫プロ」=手塚マンガという式の成り立たなくなっていた時期、TVの画面を通じて、その事実を見ていた私ですが、最初こそ奇異に感じたものの、ほどなく慣れっこになっていったのを思い出します。
 あの状況の中で、なおも走り続けている手塚治虫の姿を、あの頃の私は、想像することが出来ませんでした…。

 ところで、最後の『わんぱく探偵団』・『ムーミン』・『アンデルセン物語』・『さすらいの太陽』の原作者が正確にわかりませんでしたので、省いてあります。どなたか、ご存じの方、フォローよろしくお願いします※。
※あとで判明:【Rさん】から、
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 「わんぱく探偵団」は、私は見たことがないですが、江戸川乱歩原作の少年探偵団のアニメ化ということだそうです。小林少年を中心とする少年探偵団の活躍だそうです。(はじめて手塚原作でない作品)
 「ムーミン」はヘルシンキ在住の童話作家のトーベ・ヤンソンですね。たしか来日の時、私のムーミンはこんなじゃないと激怒したという新聞記事を読みましたっけ(笑)

 アンデルセン物語は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンでいいのでは(^_^;)

 「さすらいの太陽」はわからなかったです。オリジナルという可能性もありますね。内容の方は同じ病院で取り違えられた二人の娘が歌手を目指すというお話。定番通り、片方は貧しく、片方はお嬢様、実在の歌手の似顔とか歌声も登場したとのことです。

                              ヨシミツ